福岡の美術館ー福岡市美術館
はじめに
先日、大濠公園近くでの用事が早く終わりましたので、近くの福岡市美術館に行ってきました。
今回の記事は福岡市美術館全般について記載します。個別の展示会については、次回以降に記事にする予定です。
[目次]
福岡市美術館の概略
大濠公園の一角にある福岡市美術館は、わが国でも有数の環境と規模・内容を誇る近代的な美術館で、1979(昭和54)年に開館しました。
2019(平成31)年3月には、大濠公園側に新しいアプローチを設けるなどの大規模な改修が終了し、リニューアルオープンしました。
古美術においては、弘法大師筆「金剛般若経開題残巻」、尾形乾山筆「色絵吉野山図茶壺」、福岡藩主黒田家の菩提寺の一つ東光院の仏像や仏画などを所蔵しています。
また、近現代美術においては、ミロ、ダリ、シャガール、ウォーホール、青木繁、フジタなど内外のすぐれた作品を所蔵しています。
下のリンクは、福岡市美術館のホームページです。この記事を作成するにあったて、参考にしました。
三つの出入り口
福岡市美術館には、三つの出入り口があります。南口と北口は最初からありました。大濠公園側の出入り口は、2019(平成31)年のリニューアルの時に出来ました。
南口
南口は国体道路側にあります。近くには警固神社、NHK福岡局、大濠公園日本庭園があります。
南口の建物前にある像は、第十七代福岡市長で福岡市名誉市民の「進藤一馬氏像」です。
下の作品は、イギリス人彫刻家バリー・クラナガンの「三日月と鐘の上を跳ぶ野うさぎ」です。
北口
北口は2階にあります。北口を出るとエスプラナード(散策道、広場)があります。そこには、いくつかの作品が展示されてます。
下の作品は、木内克の「エーゲ海に棒ぐ」です。奥に見えるのは、大濠公園の池です。
下の作品は、エミリオ・グレコの「スケートをする女NO.2」です。
下の作品は、堀内正和の「三本の直方体A」です。
下の作品は、草間彌生の「南瓜」です。
南瓜:1994年 FRP ウレタン塗料
草間彌生:1929 / 長野~
南瓜は草間彌生が初めて手がけた野外彫刻作品です。彼女は幼少期からカボチャの「愛嬌のある形」と「太っ腹の飾らぬ容貌」に惹かれ、「たくまし精神的な力強さ」を感じたといいます。
本作に見られる、ふくよかで生命力あふれる姿や、黄色の地に映える黒い水玉のコントラストは、確かにエネルギーを放ってます。
下の作品は、 アンソニー・カロの「驚きの平面」です。
下の写真は、北口への階段付近です。
大濠公園口
大濠公園口は、一階にあります。
大濠公園口の脇には、外にカフェテラスが設けられてます。
掲示板の後ろにあるジャコモ・マンズーの「恋人たち」です。
階段を降りて行くと目の前は大濠公園の池です。
1F
一階には、コレクション展示室・古美術、ミュージックホール、アートスタジオ、レクチュアルーム、ミュージアムショップ、カフェ等があります。
ミュージアムショップ
南口から入ると、すぐ脇にはミュージアムショップがあります。福岡市美術館の所蔵品をモティーフにしたオリジナルグッズやレプリカをはじめ、展覧会図録、地元クリエイターによるグッズ、高取焼や博多織、博多人形などの伝統工芸、美術に関する書籍などを販売してます。
博多人形師の小副川太郎による、福岡市美術館所蔵品モチーフの「福かぶり猫」です。
中庭
中庭には四重塔(室町時代:14~16世紀:松永コレクション)、都府楼礎石(奈良ー平安時代:花崗岩:松永コレクション)、李 兎煥(リ・ウーファン)関係項(2004年(原作は1968年):石、ガラス、鉄)があります。
訪れた日の一階の各展示室の内容は、企画展示室では「黒田家の名宝」、「新収蔵品展(古美術)」、松永記念展示室では「春の名品展」、東光院仏教美術室では「東光院のみほとけ」でした。
各展示については、次回以降に記事にする予定です。
東光院仏教美術室
下の説明板は、東光院の概略、仏像群等の説明と東光院の写真で構成されてます。
東光院仏教美術室
この展示室では、博多区吉塚にある薬王密寺東光院に伝来した重要文化財を含む仏像群を展示しています。
東光院は、平安時代に活躍した伝教大師最澄によって開かれたと伝わり、本尊の薬師如来は寺院の建つ地名にちなんで「堅粕薬師(かたかすやくし)」と呼ばれてます。
特に眼病にご利益があるとされ、織田信長の家臣も参拝に訪れるなど、広くその名を知られていました。
江戸時代には、福岡藩黒田家の歴代藩主からも信仰をうけ菩提樹のような存在にもなっています。
明治時代以降も、住吉神社の神宮寺であった円福寺に祀られていた仏像群をうけいれるなど、活発な寺院活動を行なっていましたが、昭和49年(1974)、当時住職を務めていた清藤泰順尼(きよとうたいじゅんに)が、永らく後世へ伝えていくことを願って、仏像群を福岡市に寄贈されました。
その後昭和54年に開館した当館で保管と公開がなされ、東光院の歴史を今に伝えてます。
東光院仏教 美術室では、「東光院のみほとけ」が催されてます(2021年4月1日~2022年3月31日)。「東光院のみほとけ」については、次回以降に記事にする予定です。
松永記念館展示室
下の説明板は、松永安左エ門氏の略歴、茶との関係等の説明文と晩年の写真で構成されてます。
松永記念館室
戦前戦後に活躍した実業家で「耳庵(しあん)」と号する茶人であった松永安左エ門(まつながやすさえもん)氏(1875-1971)の蒐集品を公開する展示室です。
長崎県の壱岐に生まれ育ち、慶應義塾で学んだ氏は、福岡での鉄道事業を機に電力業界で躍進。全国の電力会社を次々と吸収合併し、世に「電力王」と謳われました。
電力業界の第一線を退いて茶の湯に没頭するようになったのは、還暦を迎える頃でした。埼玉に構えた柳瀬山荘(やなせさんそう)に隠棲するや精力的に茶道具の蒐集し、茶の湯三昧の日々を送ります。
戦後は電気事業再編成の主導役に抜擢され「電力王」と畏れられる程の豪腕を振るい、今日の電力体制基盤を確立しました。
その激務の最中も、小田原に構えた老欅荘(ろうきょそう)にて自由無碍の茶を愉しみました。
戦前に集めた茶道具の多くは戦後まもなく東京博物館に寄贈しましたが、名品蒐集の情熱は冷めることなく、昭和34年(1959)、老欅荘の東隣に開館した美術館「松永記念館」に結実しました。
氏の没後、財団法人松永記念館の解散に伴い、371点のコレクションが当館に寄贈されました。重要文化財20点、重要美術品11点を含むその内容は、茶道具のみならず日本・東洋の幅広いジャンルの名品で彩られ、国内屈指の質の高さを誇ります。
本室では1~2ヶ月毎にテーマを変えて展示替えをしながら、常時約20点を紹介してます。
松永記念館室では、「春の名品展」が催されてます(2021年4月13日~2021年6月13日)。「春の名品展」については次回以降に記事にする予定です。
企画展示室
企画展示室では、「黒田家の名宝」と「新収蔵品展(古美術)」が催されてます(2021年4月13日~2021年5月30日)。「黒田家の名宝」は次回以降に記事にする予定です。
黒田家の名宝
新収蔵品展(古美術)
2020年に新しく収蔵した作品
ミュージアムホール
文化芸術に関連した講演会や講座のほか、上映会や演劇、コンサートとしても利用されてます。
アートスタジオ
ワークショップや講演会などの利用のほか、ダンスやパフォーマンスなどの場としても利用されてます。
レクチャールーム
小規模な講演会や講座、ワークショップなどに利用されてます。
カフェ アクアム
大濠公園口側のアプローチ広場横にあるガラス張りのカフェでは、きらめく水面を眺めながら軽食やドリンクをお楽しみいただけます。
朝食にぴったりのパンやコーヒー、サンドイッチ等のランチメニュー、ケーキやソフトクリーム、アルコールやオードブルを取りそろえ、時間帯や目的によってお好みのメニューをお選びいただけます。
晴れた日にはテイクアウトを利用して、屋外でゆったり過ごしていただくのもおすすめです。
2F
二階には、近現代美術のコレクション展示室、キッズスペース、特別展示室、前川國男メモリアルスペース、美術情報コーナー、レストラン、ギャラリーA-F等があります。
一階より階段を使って二階に来ると、すぐ脇にイタリアの彫刻家マリノ・マリーニ(1901-1980)の作品「騎手」があります。
マリノ・マリーニ
イタリアに生まれる。フィレンツェ美術学校に学ぶ。1932年ヴェネツィア・ビエンナーレに初出品、1952年には同展で彫刻大賞を受賞。
1940年からプレア美術学校で後進を指導。30年代以降の素朴で強い生命力を示す騎馬像で世界的な評価を得た。イタリア近代彫刻を代表する巨匠。イタリアで死去。
前川國男メモリアルスペース
マリノ・マリーニの作品の向かいには、福岡市美術館の設計者の「前川國男メモリアルスペース」があります。
そこの説明板では、前川氏の略歴、設計への意図や想い、そして、福岡市美術館の建物の特徴等について知ることができます。近くに椅子がありますので、休憩もできます。
福岡市美術館の建物を設計したのは、建築家の前川國男(1905~1986)です。東京帝国大学建築科卒業と同時に渡仏。世界的建築家のル・コルビュジェに西欧近代建築を学びました。
帰国後は、確かな技術に基づいた「近代建築」を日本の風土に根付かせようと努力を重ね、やがて日本を代表する建築家と目されるまでになりました。
岡山県庁舎(1957年)や東京文化会館(1961年)など多くの公共建築のはか、1960年代後半から晩年にかけて国内各地で公立美術館・博物館の設計を手がけており、当館もその一つに数えられます。
1979年竣工の当館建築の外見上の特徴は、赤茶色の磁器質タイルによる外壁と、広々としたエスプラナードとロビーといったゆとりのある空間です。
アーチ状の天井やはつり壁面、照明器具にも工夫が凝らされています。来館者がくつろぐロビーの椅子や、館長室や応接室、会議室の家具も建築に合わせて製作されており、前川自身がその設計に関与しています。
当館の特徴を構成する重要な要素として見逃せません。そうした家具の多くは、当館リニューアルに合わせて修理し、再利用しています。
本スペースでは、修理前の家具類と改修前の当館建築の模型を紹介することで、前川國男のアイデアの原点をご紹介します。
美術情報コーナー
「美術情報コーナー」は、中央部にあります。このコーナーでは、福岡市美術館が所蔵する美術図書の一部(美術全集など)や展示に関する図書、雑誌や他館の展覧会チラシなどを自由に閲覧できます。
そして、館内にある約1万6000点の所蔵作品を検索できるパソコンを完備してますので、美術に関するさまざまな情報を得られます。
また、近くには椅子がありますので、展示鑑賞の合間に、ここで本を読みながらひと息つけます。
訪れた日の二階の各展示室の内容は、近現代美術室Aでは、「コレクションハイライト」と「富田溪仙展」、近現代美術室Bでは、「新収蔵品展」と「織田廣喜と平野遼」、近現代美術Cでは、「コレクションハイライト」が開催されてました。
「富田溪仙展」については、次回以降に記事にする予定です。
キッズコーナー 森のたね
小さな子どもとその保護者がくつろぐための場所として、「キッズスペース 森のたね」があります。製作したのは、アーティスト・オーギカナエさんです。
このスペースでは、畳の上でゆっくりと絵本が読め、壁のオブジェをとりはずして遊ぶこともできます。
「森のたね」という名前には、「小さな子どもたちが心に持つ美術のたねを育む場所にしたい」という福岡市美術館のスタッフとアーティストの願いが込められてます。
男性の保護者も入れる授乳室「赤ちゃんの休憩室」と女性専用の授乳室を併設してます。
「コレクション展示室 近現代代美術」の脇には、「中ハシ 克シゲ」の作品「Nipon Cha Cha Cha」があります。
題名は、五輪で日本選手を応援するときのかけ声。像のモデルは米国籍の人気力士小錦関。板塀や松に囲まれ、いかにも「日本的」だが、塀や松は金属製だ。イメージの中の「日本」とズレたリアルな「日本」がテーマだ。
コレクション展示室 近現代美術
近現代美術室A
「コレクションハイライト」が開催され、作品の中に「サルバドール・ダリ【ボルト・リガトの聖母】1950年」等がありました。撮影不可でしたので撮ったポスターを載せました。
ポルト・リガトの聖母
1950年 油彩・画布 275.3x209.8cm
サルバドール・ダリ
1904~1989 / スペイン
本作において、ダリは宗教と科学を絵画において融合しようとしてます。キリスト教絵画の伝統的主題である聖母子像の構図や図像を援用しつつも、あらゆるモチーフが浮遊し、祭壇は原子核構造と重なっています。
しかし、画面中央の聖母マリアはダリの愛妻ガラに置き換えられてます。題名にある「ポルト・リガト」は、ダリの故郷フィゲラス近くの、ダリとガラが戦後に移り住んだ港町です。
「冨田 溪仙展」は撮影可でしたので次回以降に記事にする予定です。
近現代美術室B
「新収蔵品展」と「織田廣喜と平野遼」が開催されてましたが、撮影不可でしたので、館内の案内板の写真を載せました。
織田廣喜(福岡県出身、1914~2012))の作品は、幻想的な女性像が特徴で、二科展を拠点に活躍しました。一方、北九州市で活躍した平野遼(大分県、1927~1992))の作品は、自己の内容を反映させた人物や風景描写が特徴です。
近現代美術室C
「コレクションハイライト」が開催され、作品の中に「インカ・ジョニバレCBEの【桜を放つ女性】」等がありました。撮影不可でしたので撮ったポスターを載せました。
下のブログ「福岡市美術館ブログ」では、インカ・ジョニバレCBEの【桜を放つ女性】について、写真を用いて詳しく説明してます。是非クリックして覗いてみて下さい。
下の写真は、コレクション展示室の最後の壁に設置されてる作品「KYNEの【Untitled】」です。ガラス越に外のエスプラナードからもご覧いただけます。
KYNE(1988~)
Untitled
2020
白い壁いっぱいに描かれるのは、横たわり、窓の向こうを眺めている女性。KYNEは本壁画製作にあたり、「公共性と自由」というテーマを設定した。美術館も大濠公園も公的な場所。公共とは、自由とは何か。この人物はそんなことを考えるているのかもしれない。
※本作は2022年12月末までの期間限定公開です。
KYNE(キネ)
福岡に生まれ、福岡を拠点とするアーティスト。大学時代に日本画を学び、並行して2006年頃から活動を開始。2010年頃、クールな女性を描く現在のスタイルを確立。1980年代の大衆文化を独自に解釈し生まれた絵画は、国内外で注目を集めている。
ギャラリー A-F
創作活動の発表の場にご利用いただけます。
レストラン プルヌス
美術館で最も眺めの良い位置にあるレストラン「プルヌス」では、大濠公園やエスプラナードを一望できます。
地元食材を使った料理を中心に、和食・洋食のランチ、夕日や夜景とともに味わうワイン、週末限定のブランチ等多彩なメニューをお楽しみいただけます。
下の動画は建物全体撮影してます。
アクセス
〒810-0051 福岡県福岡市中央区大濠公園1−6
地下鉄
○空港線 福岡空港駅から15分、博多駅から10分、天神駅から5分で
● 大濠公園駅下車、3・6番出口より徒歩10分
○七隈線 天神南駅から8分で
● 六本松駅下車、2番出口より徒歩10分
バス
○JR博多駅交通センターから西鉄バス13・140番系統で
●城内美術館東口下車徒歩3分
- 駐車場:有 駐車台数:20台
利用案内
開館時間 9:30~17:30
※7~10月の金・土曜日は20:00まで
入館はいずれも閉館の30分前まで
休館日 月曜
祝日・振替休日の場合はその後の最初の平日
12/28~1/4
観覧料金
【コレクション展・企画展】
一般 200円 高大生 150円 中学生以下 無料
【特別展】
展覧会によって料金が異なります。
TEL 092-714-6051(代表)
最後に
今回の 記事作成中に、福岡県に緊急事態宣言が発令されました。福岡市美術館では特別展「高畑勲展」は開催しますが、コレクション展示室、ギャラリー、キッズスペース、美術情報コーナー、カフェ・レストラン、ミュージアムショップは、令和3年5月12日(水)~31(月)まで閉鎖します。
そこで、福岡市美術館のスタッフやボランティアの方が、福岡市美術館のことをもっと知ってほしくて、福岡市美術館のおすすめスポットや作品を1分動画として、5月18日~5月30日に順次公開していくようです。
下のリンクをクリックすると「福岡市美術館おすすめ紹介動画」を視ることができます。
総館長なかやまさんのおすすめ:中庭